【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 キッカケは些細だとしても、道を誤れば、大きな罪と成り得る。

 コーエンは本当はマッケンジー家を――――シリウスを救いたかったのだろう。苦し気な表情が、クララの心を抉った。


「脅されていたのはマッケンジー家だけじゃない。複数の貴族が脅迫を受けて、あなたに献金をしていた事実を認めている。手口も密猟に限った話じゃない。資料も証言も、全て俺が手に入れている」

「そんなバカなことが……誰が……誰が資料を殿下に…………っ!あれは陛下と財部の人間のみが閲覧を許可された資料だ!殿下が確認した資料など、偽物に決まって――――」

「資料は僕が借り受けました」


 そう言ってヨハネスが手を上げた。
 伯爵はいよいよ顔を真っ赤にし、ガチガチと歯を鳴らしている。


「財部の子に頼んだら、快く貸してくれましたよ。どうか、お検め下さいって」

「裏切者!私がお前を王太子にするためにどれだけ……っ!」

「やだなぁ。僕はただ、資料を借りただけだもの。まぁ、財部の子は、本当の資料の借主がフリードだって分かっていたみたいだけど」


 ヨハネスはそう言って、チラリと後方を振り返った。よく見れば、そこにはクララの閲覧申請を退けた、若い文官が立っている。


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