【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「首尾はどんなだ?」


 ふと後からそんな声が聴こえる。クララが振り返ると、そこにはコーエンがいた。
 コーエンはクララの隣に腰掛けるとニヤリと眼を細めた。


「ボーっとすんなよ。せっかくの出会いのチャンスなのに」

「分かってるわよ」


 ムスッと唇を尖らせながら、クララは前を向く。

 王子の仕事の一つに、定期的に騎士たちの鍛錬の様子を見て回るというものがある。本当はフリードが直接赴いた方が騎士たちの士気はあがるのだが、毎回自分で足を運べるほどの時間はないらしい。そんなわけでクララは今、フリードの名代としてここ練武場にいる。


「ありがたく思えよ」


 何が、とは言わず、コーエンはクララの頭をワシワシ撫でる。
 数ある仕事からこの仕事をクララに割り当てたのはコーエンだ。恩着せがましいとは思いつつも、クララは小さく頷いた。


「俺たちの仕事って殆どが執務室に缶詰だからな。うまく外に出ないと息が詰まるんだよ」


 肩をぽきぽきと鳴らしながら、コーエンは笑う。


(確かに……)


 クララが城で仕事を始めて5日が経つ。
 その間、執務室を離れたのは、初日の城内巡りと、今この時だけだ。


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