【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「どうしたの、クララ?そんな怖い顔しちゃって」

「……どうしたの?じゃありません。一体、どういうことなのでしょうか?」


 未だコーエンはクララの手を放すことなく、けれど目を合わせようともしない。いつもは饒舌な癖に、一切口を開こうとしないのだ。


「さっき話した通りだよ。次の王太子はフリードに決まったんだ」


 まるで幼子に言い聞かせをするかのように、フリードはクララの頭を優しく撫でる。仕草も口調も普段通りのフリード。けれど、格好と言っていることだけがチグハグで、クララの理解が追い付かない。


「良かったね、クララ。これでヨハネスと結婚しなくて良いし」

「それは……そうかもしれませんけど、今はそれどころじゃありません」


 ヨハネスとの結婚のことなど、今はどうでも良かった。
 それ以上に大切なことが目の前に横たわっている。


「殿下」

「うん」

「フリード殿下」

「ううん」


 二回目のクララの呼びかけに、フリードは首を横に振った。彼の後ろでは、カールとヨハネスが何とも言えない渋い顔をしている。


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