【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「うわぁ……まさかとは思っていたけど」

「俺もだ。何かがおかしいとは思っていた。しかし、またなんとも……」


 ヨハネスは扇で口元を隠しているが、口の端が引き攣っているし。カールは腕組みをし、眉間に皺を寄せて大きく首を傾げている。

 クララは何やら眩暈がしてきた。


「つい先程まで――――この広間に来るまでは、フリード殿下とそうお呼びして、お返事をしてもらえていましたよね?」


 クララは今や、混乱で涙目になっていた。


「うん、そうだね。だけど、ボクがフリードでいるのはここまで。今までごめんね」


 困ったように笑いながら、フリードは首を傾げる。

 次にどんな話が飛び出すのか、想像しては震えてしまうし、きつく繋がれたコーエンの手を振り払いたくなる。けれど、コーエンの手のひらは熱く、触れたところから緊張が伝わってくるかのようだった。


「改めて自己紹介を。ボクはジェシカ。この国の王女だよ」


 フリード、改めジェシカはそう言って、恭しく膝を折る。

 その瞬間、クララの心臓がドクンと大きく跳ねた。


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