【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「おーーい、シリウス!」


 見ればコーエンは手を振り、騎士たちの方へと向かっている。騎士たちはコーエンの姿を認めると、すぐに恭しく頭を下げた。


「珍しいな、おまえがここに来るの」


 シリウスと呼ばれた相手だろうか。赤髪の騎士がコーエンの肩を抱きながら、人懐っこい笑みを浮かべる。


「まぁな。たまには顔出しておかねぇと」


 周りの騎士たちの顔を上げさせつつ、コーエンはチラリとクララを振り返った。不敵な笑みがクララを捉える。


(息抜きに来たって言ってたくせに)


 そんなことをまるで感じさせない太々しい態度だ。クララは思わず苦笑を浮かべた。


「折角来たんだ。手合わせしてくれよ。デスクワークばっかじゃ身体がなまるんだよ」


 コーエンは近くの騎士から木刀を奪い取りながら、ニヤリと笑う。


「――――デスクワークばっかりやってる人間が手合わせの相手に指名するのが、近衛隊長の俺とはねぇ」


 シリウスはそう言って挑発的な笑みを浮かべた。

 いつの間にか二人の周囲からは人が退き、少し離れたところに円形を成している。体格に恵まれた騎士たちでできた垣根は、クララの視界をあっという間に遮ってしまった。


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