【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「最低なことは重々承知のうえ、俺はクララに嘘を吐いた。『やっぱり俺には王太子としての資格はない』って。そう確認するために」


(コーエン)


 心が熱くて、もどかしくて堪らない。
 クララは身体の向きを変えると、コーエンをギュッと抱き締めた。


「だけど、クララと一緒に過ごすうちに、俺はどんどん考えが変わっていった。王太子にならないと、できないこともあるのかもしれない。守れないものがあるのかもしれない。クララが王妃になったら、どんなに素晴らしい国になるだろう。……そう思った。そしたらクララが言ったんだ。『俺に王になって欲しい』って」


 コーエンの声が小刻みに震えている。心に直接響く、彼の言葉。先程までとは全然違う、温かな涙が、クララの頬を伝った。


「そんなこと、絶対に起こりっこないって思ってた。王子フリードではなく、俺自身を――――他でもない。クララが王として選んでくれた。望んでくれた。俺がどれほどビックリしたか……嬉しかったか分かる?」


 声も出せぬまま、クララはコクコクと頷く。苦しいほどに抱き締められて、クララはギュッと目を瞑った。


(わたしたちはきっと、よく似ているんだわ)


 必然と運命は、全く異なるところにあるようで、とてもよく似ている。

 コーエンは『己が王太子になる必然』を望んだ。自分じゃなければいけない、その理由と、それを見出してくれる誰かを探していた。それがクララだった。

 そしてクララは『運命の相手』を探していた。誰かに決められた誰かではなく、自分で自分の運命を選んでいく。その先にコーエンがいた。

 クララとコーエンは、出会うべくして出会い、そうして惹かれ合った。そう思わずにいられないのだ。


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