【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 コーエンが何を望んでいるのか、分からないクララではない。恥ずかしさを堪えながら、真っ直ぐにコーエンを見つめる。


「…………今度は断らないよな?」


 けれど、次に聞こえたのは、コーエンらしくない呟きで。
 いじけるように尖った唇に、自信なさげな表情。
 それがあまりにも愛おしくて、クララは声を上げて笑う。


「ちょっ……!笑い事じゃない!俺がどれだけ――――」


 その時。クララはそっと背伸びをして、コーエンの唇に己の唇を重ねた。
 甘くて、温かい口付けが、二人の心を満たしていく。
 そうしてゆっくりと唇を離すと、クララは真っすぐにコーエンを見上げた。


「わたしも。コーエンじゃなきゃ絶対、やだ」


 力いっぱいコーエンを抱き締めながら、クララは笑う。


「ずっとずっと、コーエンがもう嫌だって言っても、絶対に側にいる」


 コーエンはクララの望みを、願いを全て叶えてくれた。
 だから、今度はクララの番。
 彼の望む言葉を、願いを叶えるべく、クララは口を開く。


「だからコーエン。わたしを、コーエンのお嫁さんにして?」


 返事の代わりに降ってくる口づけの嵐。
 それはあまりにも甘美で、歓喜に満ちている。

 唇が触れた瞬間、僅かに見えたコーエンの表情はあまりにも幸せそうで。


(きっと、わたしも同じ表情をしているんだろうなぁ)


 クララは涙を流しながら、満面の笑みを浮かべたのだった。
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