【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 レイチェルはあの後、貴族としての地位を失った。

 父親である伯爵は極刑は免れなかったものの、娘である彼女の命は助けられた。コーエンやヨハネスたちの尽力の賜物である。


「なんて書いてあるんだ?」

「ん……田舎暮らしは案外面白い…………だって」


 レイチェルはもう二度と、生まれ育った王都の地を踏むことは許されない。
 遠く離れた海辺の里で、生涯を終えることになる。王太子妃候補だったことからすれば、ものすごい転落ぶりだ。

 けれど、文面からは彼女が幸せであることが伺える。クララは穏やかに微笑んだ。


「そうか。良かったな」

「うん。あとはね、『うかうかしてると、王太子妃の位なんて、すぐに他の令嬢に取られちゃうんだからね』――――だって」


 クララは苦笑いを浮かべながら、手紙を畳んだ。
 レイチェルらしいお祝いと激励の言葉。なんだか胸が温かかった。


「素直じゃないなぁ。ホント」


 ジェシカはそう言って笑いながら、遠く窓の外を見つめた。


「だけど、良かったよね。おかげで好きな人と一緒になれたんだもの」

「……そうかもしれないな」


 カールが渋い表情で答える。

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