【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 彼の側近だったシリウスとその両親は、伯爵ほどの罪には問われなかった。
 けれど、全くお咎めなしというわけにはいかない。
 領地を取り上げられ、王都から遠く離れた土地へ行くこととなった。

 シリウスからの近況報告によると、彼はそこで、幼い頃からの想い人と結ばれたらしい。かつて親の反対に遭って、引き離された恋人だ。
 それが誰を指すのか。明示されたわけではない。
 けれど、クララたちには答えが分かるような気がしていた。


「罪を犯した者、その家族が、ずっと不幸でなくてはならない理由などない。償いは必要だ。けれど、その中で少しでも幸せに暮らしてくれることを祈る」


 カールはため息を吐きながら、そう呟いた。


「――――いや、祈るだけではダメだな。そういう国にしていかなければならない。俺たちの手で」


 感情表現の苦手なカール。けれどきっと、その気持ちはシリウスとレイチェルに届いている――――届けばよいと、クララは思う。


「そうだな。実際、俺一人でできることなんて限られてるし、俺だけじゃ見えないもの、変えるべきことはきっといっぱいある。だから……これからもよろしく頼むよ」


 コーエンはそう言って笑った。

 仲の悪く、顔を合わせることすらなかった三人の王子たち。
 けれど少しずつだが、三人は歩み寄っている。
 己の理想を互いに託し、一つの目標に向かって進んでいこうとしている。

 そのことが、クララはとても嬉しかった。


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