【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

38.【番外編】王太子婚約者の恋愛事情(前編)

「……なるほどね」


 煌びやかな夜会会場の中、ヨハネスは僅かに目を細める。

 明るく社交的な第二王子――――それが世間からの彼の評価だ。人当たりが良く華やかで、御しやすい金蔓。貴族達はこぞって彼の元へ向かい、ごまを摺る。

 だけど、貴族達は知らない。
 先の財務大臣の失脚に、彼が大きく関わっていることを。


(表の顔は明るければ明るいほど良い)


 その方が、ほの暗い裏の顔をビックリするほど綺麗に隠してくれる。
 ヨハネスはそうして、容易く情報を手に入れてきた。


「如何しますか、殿下?」

「――――そうだね。取り敢えずは様子見、かな」


 これが一体どう転ぶのか――――それを判断するには情報が足りない。すぐにどうこうなる話でもないから、ゆっくりと状況を見守って差し支えないだろう。

 この点ヨハネスは、兄のカールや弟のフリードとは違っている。二人はとにかくせっかちで直情的だから、情報を扱うには向かないのだ。


(まさか僕がこんな役回りを続けることになるとはね)


 優秀だがやる気のない弟。そんな弟も、この数か月で随分変わった。

 けれどそれは、ヨハネスも同じ。
 王太子にならないと決まったのだし、積極的に諜報活動を続けるつもりなどなかったというのに。


(惚れた弱みって奴かな)


 脳裏に浮かぶのは勝気で愛らしい少女の笑み。ヨハネスは苦笑し、静かにため息を吐く。
 それからとびきり明るい表情で、貴族達の輪へと戻っていった。


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