【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
(どっちが勝つんだろう?)


 クララもそっと騎士たちに混ざった。

 先程まで響いていた木刀がぶつかり合う音も、騎士たちの声も、今は全く聴こえない。コーエンとシリウスは言葉なく睨み合い、木刀を構えている。クララがこれまで味わったことのない緊張感に、ゴクリと喉が鳴った。

 刹那、風を切るような鋭い音が響く。先に動いたのはどちらだろうか。二人は鋭敏に木刀を振るっていた。

 大きく、けれど無駄のない洗練された太刀筋は美しい。どちらも相手の間合いに躊躇なく切り込んでいき、その度にクララは目を見張った。


(すごい……綺麗)


 クララの血液がゾクゾクと騒ぐ。先程まで眺めていた騎士たちの練武の様子とはまるで違う。目の前の二人から目が離せない。

 その時、コーエンの耳元をシリウスの木刀が掠めた。ハラハラと風に散るコーエンの髪の毛にクララは目を奪われる。けれどその瞬間、周りの騎士たちから大きな歓声が上がった。

 ふと視線を移せば、いつの間にかシリウスは膝をつき、まっすぐにコーエンを見上げている。シリウスから数センチ離れた位置に、コーエンの木刀が突きつけられていた。


「――――俺の勝ち」


 コーエンはシリウスに手を差し出しながら、ニヤリと笑う。先程までの真剣な表情からは想像もつかない、邪悪な笑みだ。


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