【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
(とはいえ)


 もしも王女が本気でコーエンとの結婚を望んでいるなら、クララにはどうすることも出来ない。


『クララじゃないとダメだから、ずっと俺の側にいて欲しい』


 求婚の際、コーエンはそう言ってくれた。
 けれど、状況は刻一刻と変わっていく。プロポーズの言葉と国益とじゃ、後者の方が圧倒的に重い。
 コーエンがクララとの婚約を破棄したとしても、誰も彼を責めないだろう。クララとて受け入れるしかないと思っている。


(思っているんだけど)


 理性と感情は別物だ。
 本音を言えば、コーエンにはクララを選んで欲しい。クララ以外を愛する気はないと。唯一の妻だと言って欲しい。


(まだ、アリス殿下がどんな腹積もりかは分からないけど)


 ついついため息が漏れてしまう。


「クララ、戻ってる?」


 その時、執務室の扉が開き、コーエンが顔を覗かせる。クララは微笑みつつ、急いでコーエンを出迎えた。


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