【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 ヨハネスの事前情報通り、アリス殿下は大層美しい姫君だった。
 真っ白な肌にシルクのような光沢を放つ髪、紅い瞳が神秘的で、同性であるクララでさえ思わず息を呑んでしまう。


「この度は御即位、ご婚約、おめでとうございます」


 恭しく祝辞を述べられ、コーエンと共に笑顔で応える。


「本来ならば発表の折に参るべきところ、こうしてご挨拶が遅くなってしまったこと、父に代わってお詫び申し上げます」

「とんでもないことです。長旅でお疲れになられたでしょう? まずはごゆるりと身体を休めてください」


 コーエンはそう言って、スッと腕を差し出す。傍らには男装姿のジェシカが並んだ。
 アリスはパッと瞳を輝かせると、コーエンの腕を取り、美しく微笑む。クララの胸がツキンと痛んだ。


「わたくし、行ってみたい場所が沢山あるのです! 是非、お二人に連れて行っていただきたいわ!」


 三人の後をしずしず歩きながら、クララの表情は次第に曇っていく。
 『二人』とわざわざ言及したのだ。その中にクララは含まれていない。本当ならば同行したいが、叶わないだろう。

 チラリとコーエンを見上げれば、アリスと会話をしながら、楽しそうに微笑んでいた。それが正解だと分かっているが、モヤモヤはする。


(コーエン、わたしは?)


 何度もそう尋ねたくなったが、クララは必死に口を噤んだ。


< 242 / 250 >

この作品をシェア

pagetop