【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 ヨハネスの情報は正しかった。
 世話役――――という言葉が正しいかは分からないが、アリスは連日に渡って、コーエンとジェシカを連れまわした。

 歴史的価値の高い神殿や離宮、湖等を見て回り、食事やお茶を共にする。まるで恋人――――いや、婚約者であるクララよりも余程親密だ。クララとコーエンは、滅多にデートなど出来ないのだから。



「――――こんなことをしている場合か?」


 尋ねたのはカールだ。
 イゾーレと共に汗だくになるまで、クララはひたすら走り続ける。腹筋、腕立て伏せ、剣の素振り等々、毎日クタクタになるまで身体を動かした。


「鍛えろって仰ったのは殿下でしょう?」


 そう言って唇を尖らせれば、カールは無言でため息を吐く。

 痛々しいことは重々承知。
 けれど、執務室に一人で居ると悲しくなる。苦しくなる。王妃教育を受けていても、何だか虚しく、無駄に思えてきて、どうにもやり切れないのだ。

 その点、身体を動かしている間は、嫌なことを忘れられる。夜、クララに会いに来たコーエンに対して強がりも言える。



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