【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「君は存外不器用だよね」


 五日が経過した頃、ヨハネスがクララの元を訪れた。イゾーレやカールは公務があるため、今日はクララ一人きりだ。
 ヨハネスの言葉に応えぬまま、クララは静かに汗を拭く。


「困ったときは僕を頼れって言ったのにな」


 呆れたような笑い声。クララは俯いたまま、グッと眉間に皺を寄せた。


「フリードとの結婚がダメになったら、僕のところに来れば良いだろ?」


 ヨハネスの胸に顔を押し付けられ、クララの目頭が熱くなる。ずっと堪えていた涙が零れ落ち、喉が焼けるように痛くなった。


「――――まだ、ダメになってない!」

「知ってる」


 ポンポンと背中を撫でられ、クララの口から嗚咽が漏れる。


「知ってるけど、僕は狡いからね。好きな子が弱っている時に漬け込むのは当然だろう?」


 胸が痛む。
 けれど、これまで一人で抱えていた重荷が一気に軽くなった気がした。


「君も少しぐらいズルを覚えた方が良いよ。人の好意を――――僕を利用して良いんだ。覚えておいて?」


 クララには頷くことも、首を横に振ることも出来なかった。


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