【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「ご無沙汰しております、スカイフォール様」


 まるでお手本のような完璧な動作でイゾーレが礼をする。クララも同様に礼を返した。

 メンゼル侯爵はこの国における軍事のトップ、大将位にある御方だ。その娘、イゾーレは幼い頃から剣を握らされていたらしい。大変厳しく躾けられた結果、今のような人格が出来上がったというわけだ。


「このようなところであなたにお会いすることになるとは、想像もしておりませんでした」


 クララはそう言ってイゾーレを見つめる。

 イゾーレは決して社交的な人柄ではない。けれど、幼い頃から父親同士を通じて多少交流があった。とはいえ、屋敷に来たところで互いに殆ど会話はなかったのだが。


「ふん、どうせすぐに決着はつく。イゾーレはすぐにおまえの手の届かぬ存在になるさ」


 カールはそう言ってイゾーレを抱き寄せた。さり気なく為された勝利宣言。クララはひっそりと眉間に皺を寄せた。


「それはどうでしょう?」


 これまでずっと黙っていたコーエンが、ようやく言葉を発する。その挑戦的な口調に、クララは目を見張った。


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