【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「握手ぐらいしとけよ」
コーエンがクックッと小さな笑い声を上げながら、そう呟く。
「どの道おまえはもう逃げられないんだって。そろそろ自覚しろよ」
そう言ってコーエンはクララの手を取ると、そっと指先に口づけた。
「なっ……!」
クララは思わず飛び上がり、手を振り解きながら頬を紅く染める。悪戯っぽく細められたコーエンの瞳が、何とも腹立たしい。
(なんなの、この人)
こんなにも意地の悪い人間は、クララのこれまでの人生で見たことが無かった。
きっと王子の側にいるのだから、それなりの身分で、それなりの教育を施されてきた人間なのだろう。
それなのに、やたらと口が悪いし、『おまえは王子の婚約者なのだ』と宣ったその唇で、平気でクララに口付けて見せる。不快に思った王子から罰せられないのか心配になるレベルだ。
「それで、君が内侍として呼ばれた理由なんだけど」
ハッと振り返ると、フリードがクララの手を勝手に握っていた。ひやりと冷たく、凹凸の少ない手のひらだ。
おまけに何故か話が先に進んでいるので、呆気にとられながらも、クララは居住まいを正した。
「我が国の王太子が未だ決まっていないことはクララも知っているよね?」
「はい、存じ上げております」
コーエンがクックッと小さな笑い声を上げながら、そう呟く。
「どの道おまえはもう逃げられないんだって。そろそろ自覚しろよ」
そう言ってコーエンはクララの手を取ると、そっと指先に口づけた。
「なっ……!」
クララは思わず飛び上がり、手を振り解きながら頬を紅く染める。悪戯っぽく細められたコーエンの瞳が、何とも腹立たしい。
(なんなの、この人)
こんなにも意地の悪い人間は、クララのこれまでの人生で見たことが無かった。
きっと王子の側にいるのだから、それなりの身分で、それなりの教育を施されてきた人間なのだろう。
それなのに、やたらと口が悪いし、『おまえは王子の婚約者なのだ』と宣ったその唇で、平気でクララに口付けて見せる。不快に思った王子から罰せられないのか心配になるレベルだ。
「それで、君が内侍として呼ばれた理由なんだけど」
ハッと振り返ると、フリードがクララの手を勝手に握っていた。ひやりと冷たく、凹凸の少ない手のひらだ。
おまけに何故か話が先に進んでいるので、呆気にとられながらも、クララは居住まいを正した。
「我が国の王太子が未だ決まっていないことはクララも知っているよね?」
「はい、存じ上げております」