【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 大西洋に浮かぶ小さな島国であるここ、シャルゾネリア王国は、1500年以上の長きにわたり、一つの王家が国を治めている珍しい国家だ。国土の広さも変わらなければ、他国から人や文化の流入も殆どない。頻繁に侵略戦争を繰り返し、王の変わる近隣諸国とは違い、あらゆる意味で平和で安定した国だ。


 この国には現在、3人の王子が存在している。
 18歳のカール第1王子。
 17歳のヨハネス第2王子。
 そして今目の前にいる、16歳のフリード第3王子だ。


「通例ならば国王――――陛下の即位と同時に王太子を立てられるのですよね?」

「そう。でも、陛下が即位したとき、ボクらはまだまだ幼かった」


 クララの記憶では、現国王の即位は今から十年前。確かに、その頃の王子たちは皆、幼いと形容される年齢だろう。


「あの時点で、どの王子が次の王としての素質を持っているか分からなかった。だから、王太子の席は空いたままにしてあったんだ」


 フリードは穏やかな表情でそう説明した。


「ところが、だ。数年かけて様子を見たものの、3人の王子たちの能力はどれも甲乙つけがたい。おまけに王子たちの生母は全員異なる上、実家の勢力もほぼ同格。これでは誰が次の王に相応しいか決めることができない。我らが王は困り果てた。――――そこで、あんたたちの出番だ」


 話を引き継いだコーエンは、クララに向かってビシッと指を指す。


「あんた……たち?」


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