【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「……お楽しみのところ悪いんだけど、『もてなすため』っていうのは建前だし、俺たちは全く楽しめないぞ」


 コーエンは横目でクララを見つめながら、ポツリと呟く。


「建前?」


 クララが聞き返すと、コーエンは小さく頷いた。


「色々名目を立てていても、とどのつまり相手はうちを品定めするために来国するんだ。だから、他国からの客のために開く宴ってのはつまり、相手から侮られないためのパフォーマンスなんだよ。『うちの国はこれだけ金を持っています、こんなに文化が発展しています』って誇示するために開くわけ。だから、何を見せるのか、どう見せるのか、あれやこれやとめちゃくちゃ神経使うんだよ」

「なっ……なるほど」


 島国であるこの国が、他国から攻撃を受けたことは少ない。けれど、皆無というわけでもない。

 国の弱味を見せることは、相手に付け入る隙をあたえること。延いては侵略戦争の火種となる可能性がある。

 逆にここで国力を見せつけておけば、相手も海を超えてまで手出しをしようとは考えづらい。無駄な血を流すことなく、戦争を回避できる、というわけだ。


(外交って案外難しいのね)


 単に仲良くしていれば良いというわけではないらしい。クララは小さくため息を吐いた。

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