【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

11.Upside down

「遅いぞ、シリウス」


 コーエンは眉間に皺を寄せつつ、シリウスを見上げる。それからメニューを畳むと、ふぅとため息を吐いた。


「そう言うなって。これでも急いで来たんだぞ?」


 シリウスは苦笑いを浮かべながら、額に滲んだ汗を拭った。頬も火照っており、ここまで走ってきたことが窺える。


「あぁ……、直前になって外出がカールにバレたとか?」

「……大正解。あの人、外周100回終わるまで城から出さん!とか言うんだもんなぁ。マジ最悪。俺、今日は非番なのに」


 クララの向かいの席に座りながら、シリウスは大きなため息を吐いた。


「あっ、クララちゃん、昨日ぶり!最近よく会うね」

「えっ?えっと……」


 確かにシリウスとは昨日も顔を合わせている。けれど、彼の様子は今とあまりにも異なっていて、クララは戸惑いを隠せない。


(カール殿下の前では、あんなに硬派でキツい印象なのに)


 今のシリウスは、面倒見の良い近所のお兄さん、といった感じだ。

 いつもカールとセットで会っていたため忘れていたが、初めて会った時だって、シリウスは今と同じように、クララに対しても好意的に接してくれた。


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