【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 ならば二人は、何のために城を抜け出し、シリウスとこうして話しているのだろう。カールを説得するためなのだと、クララは思っていたのだが。


「あいつは頭がものすごーーーーく堅いけど、その分自分の興味ある方向ばっかり見る奴なわけ。だから、上手いことあいつに気づかれないよう、根回ししたら良いんだよ」

「具体的には?装飾とかはどうやってもバレるし、「無駄なことするな!」って怒られるのは多分間違いなく俺なんだけど」


 コーエンの説明に、シリウスは不満げに呟く。何だかクララは、本気でシリウスが気の毒になってきた。


「会場は基本いじらない。そりゃぁ本当は趣向を凝らしたほうが良いんだけど、今回は諦める。その代わり、シリウス」

「ん?」


 コーエンはシリウスに向けてビシッと指を指す。クララはシリウスと一緒になって、小さく首を傾げた。


「おまえ達――――警備の騎士を飾りとして使う」


 そう言ってコーエンはニヤリと笑う。


「騎士だけじゃない。儀礼担当の文官も、クララたち内侍や侍女達も、俺の指定した通りに着飾ってもらう。少し値は張るけど、本来なら会場設営に使う筈の金だし、必要経費だろ」


 コーエンの説明を聞きながら、クララはそっと目を瞑った。

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