【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 きっと彼の頭の中には、もう当日の画像が浮かんでいるのだろう。クララにも同じものが見えないだろうか。そんなことを考える。


「カールは基本、自分が着るものに頓着しないから、用意した衣装を渡せば着るし。他のメンバーは何とかなる。俺がなんとかするよ」

「……まぁ、宴に派手な衣装ってのは常套手段だと思うけどさ。全員の衣装のコンセプトを揃えるわけ?今から仕立て間に合う?」


 シリウスは残された日数を指折り数えながら、首を傾げた。


「そこはクララの父親に協力してもらうことにするよ」

「……えぇ?お父様に?」


 思わぬところで父親を引き合いに出され、クララは目を丸くした。


「確か、おまえん所の領地は織物が名産だったよな」

「う……うん。そうだけど」


 クララは答えながらコーエンを見上げる。

 領地で作っている織物は、とても良い品で、大量生産が可能だ。今の時期は丁度衣の入れ替わりの時期で、出荷前の品が沢山あるはずだし、仕立屋にも顔が利く。その点にコーエンは目を付けているらしい。


「任せたからな」


 コーエンはそう言って、真っ直ぐにクララを見つめてくる。まだ具体的に何をすれば良いのか、何をするつもりなのか分かっていない。けれど、コーエンの押しの強い笑顔に、気づけばクララは頷いてしまっていた。無意識の行動だった。


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