【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 この王太子争いは、クララが抜けては成り立たない。

 だから、運命の出会いと恋を望むクララに、彼女が欲しているものを与える。そうすればクララはこの場を離れはしない。好きになった男のため、その主君であるフリードのために身を挺すと考えたのだろう。


(わたしを落とすのは、殿下でもコーエンでも、どちらでも良かった)


 王太子争いの間、どちらかがクララの気を惹きつけておければ良かった。ただ、それだけの話だ。


(コーエンが思わせぶりな行動を取るのも当然じゃない)


 結局、コーエンが勘違いさせるような行動を取った理由もクララ自身にあったのだ。


(本当……救いようがない)


 目の奥がツンと熱く、目尻には涙が浮かびあがる。

 きっとこんなことがなければ、ふわふわと綿菓子のような甘さに身を投じ、ただ利用されていた。
 けれどクララは本来、利用されたと気づいても、こんなにも傷つかなかったのだと思う。王太子争いに巻き込まれた時点で、クララは大きな盤上の駒の一つになった。利用されることなど当たり前だ。


(それなのに、こんなにも悲しく思うのは……)


 コーエンの行動が、自分でもフリードでもない。『ジェシカ』という女性のために為されたものだと知ってしまったからだ。


(わたし……わたし…………)


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