【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 翌日、クララがイヤリングを身に着けずに出勤した時、コーエンは何か言いたげな顔をしていた。『なんで着けていないんだ』とでも言いた気な表情。けれど、結局口にはしなかった。


(あんなもの、着けられるわけないじゃない)


 コーエンがくれたのは、普段使いするには華美なイヤリングだった。親指ほどの大きさを誇るエメラルドに、周りを彩るダイヤモンド。相当高価な品であることは子どもでも理解できる。同僚相手に気軽に贈っていい代物ではない。ましてや休日出勤のお礼には不釣り合いである。

 それに、あのイヤリングを見ると、嫌でもあの日の口付けが甦ってしまう。温もりを、感触を、唇にリアルに思い出してしまうのだ。


(本当は返してしまいたいのだけど)


 下手に突き返せば、コーエンは更なる策を立てるだろう。

 クララを本気で王太子争いに立ち向かわせるため、この場に縫い留めるために、他の手を考えるはずだ。それがコーエンやフリードによる色恋管理なのか、はたまた別の手段によるものかは分からないけれど。

 それならば、今は彼の術中に嵌っている振りをした方が良い。そちらの方が余程、互いのためになる。


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