【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「たまにで構いません。私と話をする機会を設けてはいただけないでしょうか?」

「へ?」


 クララは思わず素っ頓狂な声を上げた。

 話をする機会、とは?とクララは今しがたイゾーレが口にした意味を紐解いていく。

 見ればイゾーレは、普段は雪の彫刻のようなその顔を、ほんのりと紅く染めていた。唇をギザギザに引き結び、少し不安げにこちらを見上げている。


(かっ……可愛い!)


 思わぬギャップに、クララは眩暈がした。

 もしかするとイゾーレは感情表現が苦手なだけなのかもしれない。そんな風に考えれば、これまで彼女から受けた数々の言動も、何だか可愛く感じられる。


「もちろん。私の方こそよろしくね、メンゼル様――――――じゃなくて、イゾーレって呼んでも良い?」


 クララがそう言うと、イゾーレはコクコクと首が痛くなりそうな程、力強く頷いた。

 この城に来て初めてできた友人第一号。何だかとても嬉しくなって、クララは微笑む。

 すると、何処からともなくレイチェルが戻って来た。ふんと鼻を鳴らし、クララたちを睨みつける。


「呆れた……。私たちは王太子妃の座を争うライバルだというのに、悠長にお友達ごっこをなさるだなんて」


 あからさまな嘲笑。クララは心の中でため息を吐いた。


「私は殿下が王位に就かれるのをお手伝いしたいだけです。王太子妃の位が欲しいわけではございません」


 そう口にしたのはイゾーレだった。無表情に見えるが、その瞳には静かな炎が宿っている。先程までなら気づかなかったであろう小さな変化だ。


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