【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「殿下とは仲良くしているのかい?彼は少し変わっているけど、優しい方だろう?クララとの相性も良いんじゃないかと思っていたんだ」
ワグナーはそう言ってニコリと微笑んだ。
どうやら彼は、娘がフリードの妃になることを案外本気で望んでいるらしい。
(お父様は権力を欲しがるようなタイプじゃないと思うんだけど)
欲しいものはもう全て手に入れている。ワグナーはクララが子どもの頃からそう話していた。地位も名誉も富も、それ以上に大事な存在である家族も。必要な分だけ全部持っているから、自分は幸せなのだと、まるで口癖のように話していた。
ならば、どうして彼がクララを王太子妃に推すのか。その想いを汲み取れないクララではない。子の幸せを願う親の願いを叶えるのは、娘の役割なのかもしれないと思った。
「お父様のおっしゃる通り、殿下は優しいわ。変わった方……というのはわたしには分からないけれど、誠実で穏やかな切れ者だと思ってる」
クララはそう言って父親に微笑みかけた。エメラルドのイヤリングが微かに揺れる。ワグナーはおや、と首を傾げた。
「それは?殿下からの贈り物かい?」
城に出仕する前のクララは、こんな宝石を持っていなかった。ワグナーはそれを覚えていたのだろう。
(さすが、お父様。目ざといわね)
こっそりと舌を巻きながら、クララは首を横に振った。
「いえ、これはコーエンから贈られたもので……」
名前を口にするだけでクララの心臓は簡単に高鳴る。父親に変な勘繰りをさせぬよう、平静を装わないといけないというのに、気を付けていても声が震えてしまう。
ワグナーはそう言ってニコリと微笑んだ。
どうやら彼は、娘がフリードの妃になることを案外本気で望んでいるらしい。
(お父様は権力を欲しがるようなタイプじゃないと思うんだけど)
欲しいものはもう全て手に入れている。ワグナーはクララが子どもの頃からそう話していた。地位も名誉も富も、それ以上に大事な存在である家族も。必要な分だけ全部持っているから、自分は幸せなのだと、まるで口癖のように話していた。
ならば、どうして彼がクララを王太子妃に推すのか。その想いを汲み取れないクララではない。子の幸せを願う親の願いを叶えるのは、娘の役割なのかもしれないと思った。
「お父様のおっしゃる通り、殿下は優しいわ。変わった方……というのはわたしには分からないけれど、誠実で穏やかな切れ者だと思ってる」
クララはそう言って父親に微笑みかけた。エメラルドのイヤリングが微かに揺れる。ワグナーはおや、と首を傾げた。
「それは?殿下からの贈り物かい?」
城に出仕する前のクララは、こんな宝石を持っていなかった。ワグナーはそれを覚えていたのだろう。
(さすが、お父様。目ざといわね)
こっそりと舌を巻きながら、クララは首を横に振った。
「いえ、これはコーエンから贈られたもので……」
名前を口にするだけでクララの心臓は簡単に高鳴る。父親に変な勘繰りをさせぬよう、平静を装わないといけないというのに、気を付けていても声が震えてしまう。