【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 おかげでクララは、他の内侍たちよりも城内を駆け回り、準備に奔走することになってしまった。当然当初聞いていた通り、度々助け舟は出してもらったし、他の部署の人間まで使う形になったが、それでも大変だった。

 けれど、目の前の光景を見ながら、クララはそうして良かったと心から思う。

 使節を含め、宴の参加者皆が息を呑み、うっとりとした表情を浮かべている。まるで時間でも止まったみたいに、神やその使者を見つめるかのように、フリードとコーエンに感嘆の眼差しを向けているのだ。


(綺麗……)


 クララの心臓がギュッと切なく軋む。
 コーエンは先程、最後の打ち合わせの場でこう言った。


『クララ――――この宴に関するおまえの最後の仕事は、俺が舞う所をちゃんと見ること。その時だけ裏に迎えを寄こすから。絶対見ろよ』


 コーエンは知らないだろう。あんな一言で、クララの胸がキュっと甘くなること。いや、頭の良い彼のこと。寧ろ知っていて言っているのかもしれない。


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