【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
16.俺のだから
会場は奇妙な熱気に包まれていた。
宴の参加者は決して多くはない。けれど、まるで何千人もの人間を集めたかのような興奮が渦巻いている。
「まさか、殿下方があのような披露をなさるとは」
クララの父親ワグナーはそう言って感嘆の声を上げている。クララはコクコクと頷きながら、心地よい余韻に浸っていた。
これまでもクララは二人が練習する様をこっそり見守って来たものの、気迫も技の完成度も今日とは段違いだった。
ふと見ると、舞を終えたフリードとコーエンは、主賓へ向かって挨拶をしている。
先程まで、近づくだけで火傷しそうな熱気を発していた二人だが、今はケロっと涼やかな顔だ。これには使節たちも大層驚いている。二人を称賛し、畏怖の念を抱いている様子が見て取れた。
(良かった……コーエンの目論見は上手くいったみたいね)
彼の読みが外れることはあまりないが、結果を見るまでは安心できない。けれど、今回は大成功と言って良いだろう。クララはほっと胸を撫でおろした。
「じゃぁ、お父様。わたしはこれで」
クララはそう言って踵を返す。宴への出入りを許されているのは、二人の舞の間だけだ。早くこの場を去らなければならない。
けれど、本当は何よりもコーエンに会いたかった。
会って、労をねぎらいたい。クララの胸を打った、この大きな感動を伝えたかった。
宴の参加者は決して多くはない。けれど、まるで何千人もの人間を集めたかのような興奮が渦巻いている。
「まさか、殿下方があのような披露をなさるとは」
クララの父親ワグナーはそう言って感嘆の声を上げている。クララはコクコクと頷きながら、心地よい余韻に浸っていた。
これまでもクララは二人が練習する様をこっそり見守って来たものの、気迫も技の完成度も今日とは段違いだった。
ふと見ると、舞を終えたフリードとコーエンは、主賓へ向かって挨拶をしている。
先程まで、近づくだけで火傷しそうな熱気を発していた二人だが、今はケロっと涼やかな顔だ。これには使節たちも大層驚いている。二人を称賛し、畏怖の念を抱いている様子が見て取れた。
(良かった……コーエンの目論見は上手くいったみたいね)
彼の読みが外れることはあまりないが、結果を見るまでは安心できない。けれど、今回は大成功と言って良いだろう。クララはほっと胸を撫でおろした。
「じゃぁ、お父様。わたしはこれで」
クララはそう言って踵を返す。宴への出入りを許されているのは、二人の舞の間だけだ。早くこの場を去らなければならない。
けれど、本当は何よりもコーエンに会いたかった。
会って、労をねぎらいたい。クララの胸を打った、この大きな感動を伝えたかった。