Tepes(ツェペシュ)
「何が言いたい」

「美奈に何かあるんですか?」

「質問の意味が分からんな」

苛苛した声で問いかける陣に、黒羽は覚めた声で答え続けた。

「美奈に必要以上、関わらないでください」

「笹森、お前はそれを強要できる立場か?」

「それは…」

「言っただろう。単なる『偶然』だと…」

言葉に詰まった陣に一瞥を与えると、黒羽は再び歩き始めた。

「クソッ…!」

唇を噛み、陣は去っていく黒羽を睨んでいた。本能的に、黒羽は何かがおかしいというのを、感じていた。何がどうおかしいかは分からない。でも、妙なものを陣と、そしてヘンリは感じていた。
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