Tepes(ツェペシュ)
母も父もつかれ切って、霊安室の外の椅子で座っていた。美奈は、ただ呆然とルナの遺体を見つめていた。

-ニゲテ-

「ぇ…」

また、あの声だ。何から、逃げろというのか…。しかし、美奈も何かを感じ取っていた。異様に冷えた、霊安室の空気に、美奈は震えた。

「な…に?」

「美奈…」

「!?」

聞き間違うはずがない。それは姉の、死んだはずのルナの声だった。身体が凍りつくようだった。

「だ…れ…」

声が上ずる。喉に何かが張り付いて、声が出ないような感覚に陥った。
< 31 / 51 >

この作品をシェア

pagetop