Tepes(ツェペシュ)
「美奈…お願いがあるの…」

「な…に…?」

目が、赤く光った。身体が、凍りつく。何も分からない、何も…。

「美奈の血を、飲ませて」

「!?」

「血が飲みたいの…美奈の、健康な血…喉が渇いたわ…水や、それ以外じゃ駄目なの…血が欲しい…血を…頂戴…美奈…」

「おね…え…?」

「私ね…あの日…あの、校舎裏で倒れていたあの日…あの方に、血を吸われた…あの日から、私は…」

あの日…。容態が急変した、あの日。あの頃から、ルナは…。そう思うと、美奈は眩暈がした。

「あの方って…」

「それは言えないわ…ねぇ、美奈…血を…」

「ぃ…ぃゃ…やめて…」

「美奈…」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

扉に体当たりをし、霊安室の外へ飛び出す。驚いた母と父が、美奈を見ていた。

「美奈?どうしたの?」

震えて何もいえない美奈を、母は抱きしめた。

「美奈…」

「!?」

母と父も、その声に顔をこわばらせる。美奈は顔を上げられずに、震えていた。

「もう…誰でもいい…血を…血を、ちょうだい」
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