Tepes(ツェペシュ)
「…いや…昔を…思い出した…だけだ」

「昔…?」

「…」

黒い瞳が、見つめている。でも、どうしても…。

「せ、んせ…離し…て」

「…すまない」

一度、強く抱きしめらると、黒羽は美奈を離し、離れから出て行った。

(先生…どうしたんだろう…)

いきなり、黒羽に抱きしめられたことよりも、黒羽が一瞬見せた悲しげな顔を見て、何故か…。

(あれ…?)

何故か…美奈の胸が痛んだ…。何でなのか…分からない…。ただ、キリキリと…切なく胸が痛む。

(…なんでだろう…)

美奈はその時、黒羽が苦手な事も忘れ…ただひたすらに、生徒としてでは無く…側に居たいと感じていた。

「なに考えてるのよ…私ったら…」
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