【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
1.伯爵令嬢、婚約破棄される
 ホルヴィスト国ロード伯爵領。もちろん、この領主はロード伯爵。彼は王都にあるレマー商会に出資をしており、そのレマー商会は魔導具を取り扱う商会でもある。
 レマー商会長のヴォルフラム・レマーとロード伯爵は旧知の仲であり、二人の信頼関係は強固なるもの。だからこのロード伯爵領には、レマー商会の魔導具工場(こうば)があり、領民たちの半数はここで働いている。これがロード伯爵領の主な収入源だ。そして、ここで作られた魔導具は、レマー商会の手によってホルヴィスト国のいたる場所で売られている。

 魔導具――。それは、魔力を動力とした道具のこと。些細なものであれば、お湯を沸かす魔導湯沸かし器。見た目はポットなのだが、これに水を入れれば数分後にお湯になり、さらに保温もできるという優れもの。よくお茶を嗜む貴族にとっては、ポットの湯が冷めないという利点が高く評価されている。

 その他にも、魔導保冷庫や冷凍庫。食品の鮮度を保つために、今ではどこの家庭に一台設置されている。さらに、魔導洗濯機。今までは手洗いをしていた洗濯物だが、これもこの洗濯機に洗濯物を入れれば自動的に洗濯をしてくれるという、主婦にはもってこいの魔導具。そして、娯楽やニュースを映すことができる魔導映像機。映像局という国管轄の組織があり、この組織が娯楽映像やニュース映像を整備された魔力波にのせて放映している。
 この、魔導保冷庫、魔導洗濯機、魔導映像機は、人々の生活を画期的に変化させた魔導具ということで、三種の神器ならぬ三種の魔導具とも呼ばれていた。

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