【コミカライズ】【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 カリーネは基板を見ながら必死になって回路図に落とし込んでいた。
 途中、ハイケに昼食と、休憩に呼ばれた。そんなことしている場合ではない、と半年前のカリーネは思っていたが、休憩時間にハイケやリンと会話をすることで、ふっと考えがまとまる瞬間が訪れるのが不思議だった。
 工房は地下室にあるため、外の光はちょっとだけ地上に出ている窓からしか取り込むことができない。日が傾き始めれば、一気に暗くなってしまう。そんなときに必要になるのが魔導灯。魔力で灯りをつける。
 生活の全ては魔導具で便利に支えられている。そうやって人の役に立つのが魔導具。少しでも良い暮らしができるように、と。そう思ってこんな魔導具があればいいよな、と新しい魔導具を考えることが、カリーネにとっても楽しいこと。
 なのだが――。

 書き終わった回路図をじっと見つめるカリーネ。
 この回路には必要なものが欠けている。だからせっかく修理をしても、また同じように壊れてしまうだろう。

「カリーネ。今日はもうそろそろ終わりなさい。夕飯の時間よ」

 ハイケの声で現実に引き戻される。と、同時に夕飯と聞けば、急にお腹が空いたような気がしてくるから不思議だった。

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