【コミカライズ】【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「カリーネ。悩んでるわね」
 カリーネのスプーンの運びがぎこちないことに気付いたのだろう。

「はい。だって、あんな不良品のような魔導具が、出回っているなんて……」

「私も魔導具士だからね。魔導具は民のためにあれ、という師匠の言葉。私もそう思ってる」

「え、師匠にも師匠がいたんですか?」

「いたわよ。もう、亡くなってしまったけどね。魔導具士らしい魔導具士だったわ。自分の気に入らない客は相手にしないの。相手がいくら金払いのいい客だったとしても、魔導具を大事にしないような客は追い返していたわ」

 もしかして、ペッツォの工房の工房主が偏屈と言われているのは、ハイケの師匠が原因なのではないか、とカリーネは思ってしまった。

「こういった魔導具を取り締まるようなことってできませんかね?」
 スプーンに人参をのせたカリーネは呟く。じっと、人参を見つめてから、それをパクっと食べた。

「うーん、取り締まりというのは難しいわね。むしろ、国に届けを出している魔導具であれば、なおさら難しいわ。違法魔導具であれば、一発でわかるだろうけど」

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