【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「ほらほら。そんな無防備な姿を見せるカリーネが悪い。ただでさえあの学校は男性の方が多いというのに」
 ラーシュはカリーネの左手をとった。彼女が逃げないように、しっかりと。
 するとカリーネはもう一度ラーシュを見上げる。ラーシュはそれを見て、笑みを零す。

「もう」
 どうやらカリーネは怒っているようだ。だが、それでもラーシュの手を振り解くつもりはないらしい。
 結局、ラーシュが何者であるか、というカリーネの欲しい答えはもらえぬまま、ハイケの工房に着いてしまう。

「ただいま帰りました」

「はいはい、お帰りなさいませ」
 中から出迎えてくれたのはリン。
「今日はラーシュさんもご一緒ですね」
 リンはカリーネとラーシュの手が繋がれたままであることにもちろん気付いたが、それをいちいち指摘するような大人ではない。
「ハイケさんからお話は伺っております。どうぞ。すぐにお茶の準備をいたしますので」

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