【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「ラーシュさん。私、荷物を置いてきますので。どうぞ、先にこちらで休んでいてください」

 リンは食堂に行ってお茶の準備をしている。カリーネはラーシュを居間の方に案内し、自分は荷物を置いてくるために自室へと向かう。

「へぇ。ここがカリーネの部屋なのか」
 部屋の扉を開けた瞬間、背後からそんな声が降ってきた。

「ラーシュさん」

「カリーネがどんな部屋に住んでいるのかなと気になってね。フランにもきちんと報告しなければならないだろう? それに君は、向こうにはずっと帰っていないと聞いている」

 ラーシュの言葉にハッとする。もう、半年以上も家族には会っていない。会いたくないわけでもないし、会えない距離でもない。会おうと思えば会えるわけなのだが、会おうと思わなかっただけ。だが、手紙は書いている。

「そうですね。こちらに来てからというもの、いろいろとありましたからね」

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