【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「お帰りなさい、カリーネ」
 すでにハイケもそこにいた。カリーネは師匠の隣に座るのだが、斜め前にいるラーシュの顔をまともに見ることができないような気分になっているのが不思議だった。

「それで、ハイケ。この俺を呼び出して何のつもりだい?」

「私があなたを呼び出すときなんて、あなたを利用しようとしているときしかないでしょう」

「そうか。俺はまたハイケに利用されるのか」
 そこで彼は肩をすくめる。利用されると口にしていても、嫌がっている様子はない。

「まあ、冗談はおいておいて。またこの子がね、すごいことを口にしたの。だけど、今の魔導具界にはそれが必要だと思ったし、それを実現するためにはあなたの力が必要だと思ったのね」

「またカリーネか。君が提案してくれた市場流通部品の再利用は、今のところうまくいっている。ただな、トッテリ商会がそれを扱っていることに向こう側も気付いたらしい」

「向こう側?」
 カリーネが聞き返したのは、その向こう側に心当たりがないからだ。

「そう。ホルヴィスト国のラベルゴ商会。連日、部品を売って欲しいと言ってくるらしい。ただ、トッテリ商会もできた商会だからね。これは国の施策で行っていることだから、ストレーム国内の商会を優先させている。また、不動在庫品を提供してくれる商会に売っているとか。そんなことを言って、とりあえずのところはしのいでいるらしい」

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