【コミカライズ】【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 こんなことをリネーアの夫であり将来的に爵位を継ぐフランが口にすれば、その金を独り占めしたいのではないかと思われそうだが、リネーアに尻に敷かれているフランがそこまでできるとも思えない。やはり、どことなく性格は三男坊の甘えん坊なのだ。
 だが、周囲は恐らくフランがカリーネを邪魔で隣国へと追いやったと思うかもしれない。むしろ、そう思わせることもフランの作戦なのだが。

 フランの話を聞いていたロード伯爵は、眉間に皺を寄せた。だが、その彼を後押ししてくれたのは、妻でありそしてカリーネの母でもあるロード伯爵夫人。

「あなた。ここはフランを信じてみてはいかが? カリーネは純粋に魔導具が好きなのよ。刺繍の練習もせずに魔導具をいじるくらいに。その大好きな魔導具のせいで、いろいろとごたごたに巻き込んでしまうのは、まだ可哀そうだと思うの。それに、隣国に行けば、リネーアがフランと出会ったように、素敵な男性と出会えるかもしれないわ」

 どうやら、母親の本音は後半部分だ。婚約解消されてしまった不憫な娘に新たなる出会いを。

「私が悪者になる分には一向にかまいません。むしろ、ヘルムート殿と婚約解消されたカリーネを隣国に追いやり、このロード領を我が物にしようとしている、くらいの噂が立った方がいいですね」
 フランはそんな自分を想像しているのか、口元をにやにやと緩めている。だが、リネーアは知っている。このフランには悪役が似合わない。良くも悪くも三男坊。

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