【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 つまり、どこかでパーティが開かれて、それにカリーネがお呼ばれする、ということなのだろうか。

「はぁ」
 気乗りのしない返事。そもそもカリーネがここに来て良かったと思った理由の一つが、面倒くさい社交界に出席しなくてもいい、ということなのだ。まして向こうで婚約破棄のようなことをされたカリーネにとっては、二度と縁がないことだとも思っていた。のだが。

「なら、仕立て屋を手配する」

「え、ここに呼ぶの? やめてよ、噂になるじゃない」

「ハイケも一着くらい、作っておいた方がいいと思うが?」

「どうしてよ」

「カリーネの師だからな」

「私は魔導具士よ。魔導具士の正装はローブよ」

「そうなんですか?」

「カリーネ、騙されるな。ローブの正装が許されるのは魔導士だ。とにかく、ハイケとカリーネのドレスを用意しなければならない、ということだけはわかった」

 もしかしてラーシュがここに居座ったのは、それを伝えるためではないかと思えてきた。
 面倒くさいわね、とハイケがため息と共にその言葉を吐き出したとき、カリーネは何故か申し訳ない気持ちになった。だが、その気持ちはカリーネも同じだったため、何とも言えない微妙な気持ち。

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