【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「あ、カリーネ嬢。いつまでも立たせたままでわるかったね。ここに座りなよ」
 なぜかマルスランが隣に座れ、とぽんぽんとソファを叩いた。
 カリーネは素直な娘である。だから、ここに座れと言われたそこに座るものだと思っている。
「では、失礼します」
 マルスランの隣に座ろうとしたところ、ラーシュに腕を引っ張られ、その向かい側のソファに彼の膝の上にのる形で座ってしまった。

「何、してるんですか。ラーシュさん」

 カリーネは慌てて立ち上がり、ラーシュの隣に座り直した。目の前のマルスランは笑いをこらえるどころの話ではない。むしろ大笑いだ。

「ラーシュがカリーネ嬢にご執心とは聞いていたけど。鎌をかけてよかったよ。君のそんな顔を見ることができた」

「カリーネ、アレには近づくな」

「ひっど。人をアレ呼ばわりするとは」
 そこでマルスランは部下その一のイヴァンにお茶を淹れるように命じる。カリーネが察するに、恐らくこの部下たちは、マルスランにいいように使われている。怪我をして動けないからさぁとか、この上司が言っているのだろう。そんな光景を容易に想像ができた。

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