【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「その魔導具。もう、いらないから捨てていいよ。だけど、パンが食べたかったのは本当なんだ。ここに住んでいるのも本当だから」

 マルスランが捨てていいよ、と言ったため、イヴァンとカルロスがカリーネに「もう、よろしいでしょうか」と尋ねてくる。カリーネは「はい」と返事をするしかなく、それを聞き入れた二人は、煤だらけで分解された魔導具をもう一度布でくるんだ。

「あ、手、洗う? 手、出して」
 汚れた綿手袋を外し、工具入れに戻したカリーネは、マルスランに言われた通り両手を差し出した。すると、水で手を洗った時のような感覚が手の平を襲う。

「うわ。すごい。これが魔法ですか?」
 少し煤けていたカリーネの手が、水と石鹸で洗った時のようにきれいになった。

「そ。サービスしといた。あ、イヴァン。お菓子もあったよね。カリーネ嬢に出して。ラーシュには出さなくていいから」

「なんだ。その差別的発言は」

「だって、君。甘いお菓子、好きでしょ? だから、あげない」

 あのラーシュがマルスランの手の平で転がされているような感じだ。
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