【コミカライズ】【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 それでも受けてしまったのは、やはり相手がモンタニュー公爵家だからだ。
「だからね、カリーネ。あなた、ストレーム国で相手を見つけてきなさい。もう、この国では婚約解消されたという悪評がついてしまうから、望みが薄いのよ。どうせこのタイミングで隣国に行くのなら、未来の旦那様も探してきなさいね」

 うぅむ、とロード伯爵は唸った。今、手元にある婚約解消の手続きの書類。これにサインさえすれば、カリーネとヘルムートの婚約は解消される。だが、その後はどうか。あのモンタニュー公爵家から婚約解消を告げられたということは、カリーネについて回る。となれば、新たな相手もなかなか見つからないだろう。と思って、そんな不憫な娘を見ると、爛々とその瞳を輝かせていた。

「カリーネ。ヘルムート殿のことは、もういいのか?」

「お父さま。さっきも私、喜んで婚約解消をすると口にしたではありませんか。はっきりいって、ヘルムート様のお顔も覚えていないのです。目が二つと鼻と口があったことくらいしか。髪の色が何色だったか、瞳の色はと聞かれても、答えることなどできません。だって、婚約の前も、婚約の後も、一度もお会いしたことが無いのですから」

 とカリーネは言っているが、実はデビュタントの時に一度だけ会っている。ヘルムートは値踏みするかのようにじっとカリーネとロード伯爵に視線を向けていたのだ。
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