【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「やったね。噂のレマー商会の魔導パン焼き機なら、美味しいパンが食べられそうだ」
 やっとマルスランの機嫌は直ったようだ。
「というわけで、よろしくね。カリーネ嬢」

 マルスランが怪我をしていない方の手を差し出してきた。恐らく、握手しよう、という意味だと思うのだが、その手をペシッと叩く人物がいた。それはもちろんラーシュ。

「なんだよ、ラーシュ。お近づきの挨拶をカリーネ嬢としようと思っただけじゃないかよ」
 叩かれた手を見つめながらマルスランは口にする。
「何も触れる必要はないだろう?」

「っていうかさ。ラーシュ、それって無意識?」

「何が」

「オレに対する威嚇」

「威嚇、だと?」

「そ。ま、いいや。だけどね、この制度が通って、カリーネ嬢もこの委員の一員となれば、カリーネ嬢を狙ってくる輩もいるわけだ」

「どういうことですか?」
 カリーネは首を横に倒す。

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