【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「帰るぞ」
ラーシュはカリーネの腕を掴んだ。帰るぞ、と言われたためカリーネは立ち上がり、慌ててリュックを背負おうとしたのだが、そのリュックをラーシュに奪われる。
「じゃ、またね。カリーネ嬢」
マルスランは左手をひらひらと振っているし、彼の部下であるイヴァンとカルロスは深々と頭を下げていた。カリーネもペコリと軽く頭を下げて、その部屋を出ていく。
王宮の廊下の壁側にはわけのわからない石像が等間隔で並べられている。その石像の前を、カリーネはラーシュにぎっちりと手を握られたまま、通り過ぎていく。声をかけたいけれど声をかけられないのは、このラーシュという男が明らかに怒っているからだ。すれ違う人に顔を見られないように、とカリーネは下を向いて、彼に引っ張られるようにして歩く。
「お、なんだ。ラーシュ殿じゃないか」
彼が急に立ち止まったのは、知り合いから声をかけられたから、のようだ。
「お前がこっちに来たってことは、例の魔導具認証の件か?」
カリーネはちらっと顔をあげて、ラーシュの会話の相手を見据えた。ラーシュよりも背は高く、身体ががっちりとしている男。だけど、見るからに文官です、というその姿。
ラーシュはカリーネの腕を掴んだ。帰るぞ、と言われたためカリーネは立ち上がり、慌ててリュックを背負おうとしたのだが、そのリュックをラーシュに奪われる。
「じゃ、またね。カリーネ嬢」
マルスランは左手をひらひらと振っているし、彼の部下であるイヴァンとカルロスは深々と頭を下げていた。カリーネもペコリと軽く頭を下げて、その部屋を出ていく。
王宮の廊下の壁側にはわけのわからない石像が等間隔で並べられている。その石像の前を、カリーネはラーシュにぎっちりと手を握られたまま、通り過ぎていく。声をかけたいけれど声をかけられないのは、このラーシュという男が明らかに怒っているからだ。すれ違う人に顔を見られないように、とカリーネは下を向いて、彼に引っ張られるようにして歩く。
「お、なんだ。ラーシュ殿じゃないか」
彼が急に立ち止まったのは、知り合いから声をかけられたから、のようだ。
「お前がこっちに来たってことは、例の魔導具認証の件か?」
カリーネはちらっと顔をあげて、ラーシュの会話の相手を見据えた。ラーシュよりも背は高く、身体ががっちりとしている男。だけど、見るからに文官です、というその姿。