【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「相変わらず偉そうな坊ちゃんだ。お姫様を守る騎士(ナイト)も大変だな。これから、よろしくな、カリーネ嬢」
 アンドレアが手を差しだしてきたのは、握手のためだ。
「あ、はい。よろしくお願いします」
 カリーネがその手に触れようとした瞬間、ラーシュに腕を引っ張られた。
「遅くなってしまったからな。早く帰るぞ」

「あ、はい。あ、アンドレアさん。すみません、お先に失礼します」

「またな、カリーネ嬢」
 あははと豪快に笑っているアンドレアは、ひらひらと手を振って若者の後姿を見送っていた。

 王宮を出たところで思わずカリーネが目を細めてしまったのは、沈んでいく太陽が目に染みたから。どうやらラーシュが遅くなったというのは、事実のようだ。あまり遅くなってしまうとハイケやリンが心配するだろう。
 ラーシュが手配した馬車に乗り込み、不規則な揺れを感じていたのだが、やはり向かい側に座っているラーシュの機嫌は悪そうだった。

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