【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「ラーシュさん。なんか、機嫌が直ったみたいですね」
 ラーシュの顔が先ほどまでのムスッとした表情とは異なっていることに、カリーネは気付いた。
「そうだな。少し気分が晴れた。そこまでだが、送っていこう」

 ラーシュはカリーネのリュックを手にしたまま、空いている手をすっと彼女の方に差し出した。カリーネも躊躇うことなくそこに自分の手を重ねる。

「カリーネ。あの制度は間違いなく採用される。これから忙しくなると思うが、頼むよ」

「はい」

 カリーネは力強く頷いた。夕焼けに染められた二人の距離が、どことなくいつもより近づいたような感じがするのは、気のせいではないだろう。
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