【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「むしろラーシュの方がそれを望んでいるし、カリーネだって彼のことを好いているんだろう? 何も問題はないと思うよ」

 フランの言葉に頷けないのは、カリーネがラーシュのことをロレンティ公爵であると知らなかったことが原因。誰もラーシュがロレンティ公爵であると教えてくれなかったのだから、知らなくても仕方ないのだが、ラーシュ本人がそれを黙っていたことが、心にもやっとした気持ちを作り出している。それでもラーシュという男を嫌いになったり、突き放したりしたいとは思わない。ただ、もやっとしているだけ。
 それに、カリーネの帰国に合わせて、こちらに書類を送りつけてくるあたりが用意周到すぎて嫌になる。完全に外堀を埋められた。逃げられない。だからといって逃げたいわけでもない。ただ、騙されたような気がして悔しいだけ。
 そう、悔しい。
 だから、この悔しい気持ちを次に会ったときに彼にぶつけてやる、と思いながら「お受けします」と答えていた。

 これが、ラーシュとカリーネが婚約した顛末。

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