【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
2.伯爵令嬢、隣国へ行く
 このロード伯領から、隣国ストレーム国の王都であるパンクハーストまでは魔導車で半日。魔導車とはその名の通り、動力が魔力の車。車輪が四つついている箱型の乗り物。馬車には御者が必要だが、この魔導車には運転手が必要となる。
 この魔導車でロード伯領を朝発てば、日が沈む前にはパンクハーストには着く。このロード伯領がホルヴィスト国の南側の国境にあるからだ。実はホルヴィスト国の王都に行くよりも、ストレーム国の王都に行く方が近い。
 だから、このロード伯領にある鉱山で採れる魔鉱石は、ストレーム国にも流通しており、ロード伯爵はホルヴィストとストレームを繋ぐ架け橋と言っても過言ではなかった。魔鉱石は魔導具製作に必要不可欠なもの。魔導具の国と言われているストレーム国は、このロード伯領の魔鉱石を重宝している。何よりも、鉱山から王都まで魔導車で半日という立地条件。もちろんストレーム国にも魔鉱石が採れる鉱山はいくつかあるのだが、やはり王都からはそれなりの距離の場所にある。
 だが、魔鉱石は天然石だ。採掘できる量というものは決まっている。己の欲求任せに、掘ればすぐに枯渇してしまう。まして、それを独り占めしようという領主であっては困る。欲にまみれず、民のことを第一に考えるような人間がロード伯爵に相応しいとされている。
 もちろん、カリーネの父親はそんな人物。だからあの嵐になりそうな日に、早めに工場で働く者たちを帰した。あの後、耳をつんざくような雷鳴が響き、雨は激しく降り、道路を川にしてしまった。幸いなことに、崩れた場所や浸水した場所はなかったが、危うく工場で働いていた者たちは帰宅できないような、そのような状況になるところだった。

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