【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 リネーアは魔導具に興味のあるカリーネと異なり、やはり女性のファッションに興味があった。だが、ただ単に見栄えのいいドレスを欲しがるのではなく、どちらかというとそこに機能性を求めている。むしろ、ドレスにコルセットは不要、とでも言うかのように。
 そして今、隣国へと向かっている魔導車の中にいる二人の女性は、コルセットが不要なスタイリッシュなハイウエストドレス。だったはずなのだが、残念なことにカリーネに似合うそれが無かったため、カリーネはちょっとフリルであしらわれたワンピース姿。カリーネのライラック色の髪は赤いリボンで高い位置で一つに結わえてある。それに引き換え、リネーアは落ち着いた編み込みだ。姉妹であるにも関わらず、どことなく姉妹に見えない雰囲気。

「リネーア、カリーネ。パンクハーストの街が見えてきたよ」
 前の席で運転をしていたフランが、後ろの女性二人に声をかけた。カリーネは窓にへばりついて外を見る。今まで長閑な田園風景が広がっていたが、いつの間にか建物が増えていた。恐らく民家。

「わぁ、ロード領とは見た目も全然違いますね」

「一応、王都だからね」

「そうよ、あんな田舎のロード領と一緒にしてはいけないわ」

「お姉さま、もしかしてロード領に不満があるのですか?」

「不満はないわ。私は王都暮らしよりも、あの田舎の方が性に合っているし。ホント、社交界シーズンにあのタウンハウスで暮らすのが億劫なくらいよ」

 社交界関係は、全て姉夫婦が引き受けている。次期ロード伯爵として、伯爵夫妻の代わりに参加しているのだが、どうやら姉はそれが面倒くさい様子。田舎暮らしをしていると、どうしても人付き合いが億劫になってしまうのは、致し方ない。

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